管理部は、「人」「モノ」「金」「会社」のあらゆる要素を取り扱っている部署です。
管理部内が業務過多である状態を続けると、将来、以下のようなデメリットが発生します。
- 情報のブラックボックス化
- ミス多発による社会的信頼の失墜
- 従業員間トラブル発生と離職者多発
こうした状況を回避するためにも、管理部の業務効率化は、現代の会社にとって、必須だと言えます。
この記事では、管理部の業務効率化が、いかに、従業員や会社を守ってくれるのか解説していきます。
1. 管理部の業務効率化とは
管理部には、少し事例を挙げるだけでも、次のような業務があります。
社会保険労務、経理、人事、法務、安全衛生、環境保全、来客対応、電話対応、雑務…
管理部の業務は非常に多岐にわたっており、これは、ごくほんの一部です。
小さな企業になると、これら全てを1人ないしは、2人程度の極小人数で対応しています。
少子高齢化に拍車がかかる日本。
中小企業が全体の99.7%の日本。
このような人員不足を起因とする状況は、さらに加速するでしょう。
また、冒頭でも述べた通り、管理部は「人」「モノ」「金」「会社」を扱う部署になります。
社外とのお金や書類のやり取りで、万が一ミスが多発すれば、会社の信頼失墜につながります。
そして、従業員間のトラブルで相談を受けた際に、丁寧で適切な対応をする余裕が無ければ、会社を去る人は増えるでしょう。
つまり、管理部の業務効率化とは、広義で「社会的信頼を安定化し、会社と従業員を守る取り組み」と言えます。
2. 管理部の業務を効率化するメリット3選
管理部の業務効率化実現の効果は、管理部員の負担軽減や会社のコスト削減に限るものではありません。
実は、従業員の定着やモチベーションアップ、誰もが働きやすい環境づくりにつながる可能性が高いです。
そこで、具体的なメリットについて、お話していきます。
メリットは次の3つです。
- 管理部内のコスト削減と負担軽減
- 従業員の心理的安全性の向上
- 新たな取り組みの創出の機会獲得
詳細については、これからお伝えします。
2-1. 効率化メリット①、管理部内のコスト削減と負担軽減
最初にお話ししていた通り、管理部の業務は多岐にわたっており、超多忙です。
特に小規模の企業であれば、管理部門の全員が毎日、長時間労働をしており、残業代がかさんでいる場合が多いです。
そこで、管理部門の業務効率化が実現すると「本来不必要だった管理部門の人件費」
の削減が達成できます。
さらに、社内の勤怠管理情報をにぎる管理部門に余裕ができるので、社内で発生している、長時間労働の削減にも、積極的に取り組めるようになります。
つまり、管理部の業務効率化は、会社全体の人件費削減と負担軽減にも効果が望める取り組みなのです。
2-2. 効率化メリット②、従業員の心理的安全性の向上
人事労務や安全衛生を扱う管理部門には、従業員の様々な相談が舞い込んできます。
管理部門がハラスメント相談窓口をになっている場合も多いので、相談の中には、ハラスメントに関するセンシティブな内容もあります。
人間関係にまつわる相談事は、対応が後手に回ると従業員の休職や退職に繋がります。
さらに、問題が悪化すれば、訴訟問題に繋がる可能性を秘めています。
そこで、管理部門に余裕があれば、このような人間関係トラブルの早期解決が可能となります。
そのため、管理部門の業務効率化は、従業員の「働く上での安心感」を形成する事にも貢献するのです。
2-3. 効率化メリット③、新たな取り組みの創出の機会獲得
管理部門では、社内システムを管理している場合が多いです。
その内容は、HPの運用であったり、社内チャットツールの管理、工場内の生産管理システムの管理などが、あります。
管理部は、本当に驚くほど、何でも屋ですよね…
何でも屋で、労務管理に人事、社内システムを把握している管理部だからこそ、新しく提案できる業務効率化策があります。
今は多忙で管理部内で隠されているアイデアが、業務負担が減ることで、実現につながる可能性が高いです。
3. 管理部における11項目の「無理」「無駄」「ムラ」
管理部の業務は、労働基準法や労働安全衛生法などの法律に基づいたものが多いです。
それゆえに、管理部業務は定型的な業務が多いということであり、毎年、毎回、悩む事案も似通ってきます。
それと同時に仕事のやり方が固定観念化しやすく、定型業務の変更や改善が実施されにくいという特徴もあります
その中で、管理部内の業務に生じてしまった「無理」「無駄」「ムラ」の事例をまとめてみました。
うちの会社も、これ当てはまる!と思った、あなたの会社の管理部業務は、十分に生産性をあげることができます。
ぜひ、内容を確認してみてください。
3-1. 入社退職手続き
入退社の手続きに関しては、書類の手続きが非常に多いです。
健康保険と雇用保険の加入・資格喪失届、労働条件通知、離職票、退職金手続き、など対象業務をあげると、きりがありません。
従業員に対応を依頼することも多く、従業員の手続きが遅れた場合など、業務が長引く場合もあります。
特に入退社が多い時期の業務負担が気になる管理部員については、システム化で効率化を図りたい業務ですね。
3-2. 勤怠管理
中小企業では、タイムカードで勤怠管理を行っている企業もまだ多いのではないでしょうか。
勤怠管理を行う上では、タイムカードは非常に便利ですが、ヒューマンエラーが起こった際に、管理部員が苦戦する業務です。
その、ヒューマンエラーとは、打刻漏れ、休暇申請漏れ、残業申請漏れです。
従業員からしたら、ついうっかり忘れてしまっていたという内容でも、管理部員は非常に困ります。
打刻がなかったり、所定労働時間を超えた時間に打刻があったりすると、その原因が分かるまで、追及する必要があるからです。
万が一、勤怠管理にミスがあると、給与に影響が及びますから、何かあると暴動が起きますよね。
この業務を効率化できれば、管理部員の負担が大幅に減るでしょう。
3-3. 年末調整
従業員にとって、年1回の資料作成です。
資料作成の手順や書き方が分からなくなった等従業員からの問い合わせが多発する業務です。
また、資料の提出期限を守らない従業員も多く、管理部員は、その資料配布後のフォローにもたくさんの時間が奪われます。
それに加えて、紙ベースで年末調整を実施すると、膨大な紙の資料を保管し、活用していくことになるので、紙もスペースも無駄が発生します。
時間、紙のコスト、置きスペースの無駄を排除すべく、業務効率化は進めるべきでしょう。
3-4. 残業、休暇等の申請書管理
残業申請、休暇申請は、承認する上司が複数に分かれる場合がほとんどです。
勤怠管理や給与計算をしている管理部に、
情報が早く来れば、手続きの処理が早くできますが必ずしも情報が早く来るとは限りません。
そうなると、手続きにかかる時間のロスは、もちろんありますが、管理部員の精神的負担も増すことになります。
また、紙ベースの申請書で管理する場合、毎月大量の申請書を管理する無駄が発生します。
こちらも、無駄が多く、業務効率化したいところです。
3-5. 各種契約書類管理
企業には、たくさんの契約書が保管してあります。
それぞれの契約書には、期限が設定されており、期限満了を迎えて、自動更新になったり、契約が切れたりしていきます。
契約書の情報を確認する必要がある場合、きちんと整理がされていない状態であった場合、非常に大変な業務となります。
知らず知らずのうちに、取引先との契約が終了していたなんてことになれば、最悪です。
契約書は企業に限らず、個人も気に掛けることがあるのではないでしょうか。
何かを契約しており、解約したい場合なども、どの条件だと違約金がかかるのか関心にのぼることも多いですから。
余談ですが、保険の契約書で、解約条件、支払い条件については、この際に、調べてみるのもよいかもしれませんよ。
驚く内容の場合もありますので…
話がずれましたが、契約書のシステム化によって管理がしやすくなると、業務負担がかなり減ります。
3-6. 電話対応、FAX対応
管理部は会社の代表番号に連絡がきた、電話やFAXを一番最初に受け取ることが多いです。
電話であれば、担当者を呼び出して、待つ。FAXであれば、担当者に情報共有する。など、手間も時間もかかります。
特に、忙しいときなど、電話対応やFAX対応がなければいいのに、と思うことが少なくありません。
ぜひ、効率化をしたいですね。
3-7. 来客対応
管理部門では、「え、来客があるって聞いてないけど…」といった状況に出くわすことがあります。
今話した事例は、そもそも情報伝達不足が問題ですが…
そもそも、来客予定を把握し、多様な業務を抱えながら、作業を中断して来客対応すること自体、負担の大きな業務です。
管理部は会社の窓口としての機能も果たすため、必要な業務ですが、せめて楽にしてほしい業務です。
3-8. 発注書、請求書作成管理
電子帳簿保存法の関係で、データで拝受した請求書の保存方法について、悩まれている管理部員もいるのではないでしょうか。
デバイスだと故障や盗難の危険性がある?クラウドだとセキュリティの問題は大丈夫なの?
というように、今、変化と検討が求められる業務ですが、プリンターの改良などが進んでおり、効率化がしやすい業務です。
3-9. 経理業務
経理業務では領収書、納品書、請求書を数多く扱います。
これらは、日々の仕分けに非常に重要な資料ですが、数が多く、煩雑化している場合があります。
たとえば、このようなことはないでしょうか。
- 領収書の内容が分からない、もしくは、無いので担当に確認する。
- 請求書の検収がまだ、そもそも誰の検収が必要か分からなくて、確認する
こういった無駄な業務が日々発生している場合があり、効率化を進めたい業務だと思います。
3-10. 安全衛生管理
こちらは、労働災害の防止や、長時間労働の削減、ハラスメントの予防や対策などが求められる業務です。
健康経営、職場の心理的安全性等が社会におけるキーワードになりつつあることから、重要性が増している業務の一つです。
限られた管理部員の時間を、いかに、この安全衛生管理に費やせるかによって、従業員の満足度向上につながります。
そのため、時間をかけたい業務です。
しかし、安全衛生管理にも多くの事務処理や事前作業があり、本題以外の業務が多くあります。
そのため、業務効率化をすることで、より、重要な事項に時間をかけていきたいところです。
3-11. コンプライアンス管理
管理部門には、コンプライアンスに関する業務を任されることがあります。
契約書が法に違反していないか、特許や著作権の管理は大丈夫か、トラブルが発生した場合の対応はどうかを管理することになります。
複雑な業務ですが、意外と同じような相談や問い合わせが来ることが多いです。
最近では、AIを用いたリーガルチェック技術も発展してきているので、効率化が可能な業務です。
4. 業務効率化達成のために必要な、8ステップ
いざ、管理部の業務効率化を実施しようとしたときに、初めての場合、どのように進めようかと迷うこともあるでしょう。
せっかくなので、業務効率化を本当に筒減させるためのガイドラインを、7ステップに分けて、ご紹介いたします。
こちらも参考に、業務効率化プロジェクトを進めてみてください。
4-1. 関係者への根回し
管理部の業務効率化、企業の業務効率化の
達成に向けて、もっとも大事なプロセスといって良いのが、この関係者への根回しです。
え、会社を良くする取り組みで、自分たちも楽になるのに、反対する人もいるの?
いるんです!
あなたががWin-Winになる取り組みだと考えて提案しても、反対する人は、たくさんいます。
むしろ、反対する人の方が多いかもしれません。
その原因は、大きく分けて以下の2点です。
- 現状の仕事を変えたくない。
- 必要性が分からない。
どういうことかというと
将来楽になる取り組みであっても、短期的に見て、今の負担を増やしたくない。現状維持がいい。
今の人員でこなせている業務を効率化して、何の意味があるの。暇になった従業員は何させるの。
という考え方を持っている人が多く、この点に不安を抱えているのです。
これらの場合、相手はプロジェクトのメリットに実感がなく、他人事である場合が多いです。
そのため、時間をかけて、こうなったら良いなというビジョンを相手に共有して、プロジェクトを自分事であると認識してもらう必要があります。
そこで、根回しが重要になってくるのです。根回しの際には、次の①のプロセスと②のプロセスを、うまく組み合わせて、進めていくとよいです。
これを、繰り返し行っていくことで、プロジェクトが相手にとっての自分事になっていきます。
ここまで述べた根回しを継続することで、新プロジェクトの土台が固まれば、メンバーも変化に柔軟になっています。
根回しが最も大変ですが、これをしておくことで、最高の状態で、プロジェクトが開始できますよ。
4-2. 現状把握
システムを導入するときは、「何をどのように変えたいのか」ということが大事です。
あなたの会社の解決したい「無理」「無駄」「ムラ」がどのようなものであるか
が「何を」ということになります。
現状把握を行うには、次の段取りで調査していくとよいです。
特に③④を調べて、作業時間が長く、担当者の心理的負担が大きいものは、優先的改善検討事項として考えましょう。
現状把握の理想は、現状の困りごとが数値データとして資料にまとめられるまで、細かく調査・ヒアリングすることです。
4-3. 解決策の検討
現状把握で浮き彫りになった課題について、どのような解決方があるか、調査していきます。
調べ方としては、次のような方法があります。
特に①について解決策が出してもらえる場合は、コストパフォーマンスによりますが、業務効率化を考える上ではオススメです。
なぜかというと、新規取引の契約書類取り交わし等、追加作業が発生しないからです。多方向から見て、業務効率化を目指しましょう。
4-4. 必要なツールの選定
解決策が分かれば、実際導入するツールを選定しましょう。
各ツールは、解決できることが明示されている場合が多いです。
現状を確認した際に、自社のニーズは浮き彫りになっているかと思いますので、最大限に使えるツールはどれか、冷静に判断しましょう。
業務効率化ツールやシステムを導入する際に気を付けたいのは、必要のない機能をもてあまさないかという点なので、注意しましょう。
4-5. 担当責任者の決定
担当責任者の決定は、業務効率化プロジェクト遂行の上で、とても大切です。
特に、次のポイントが継続して守れる人が、担当責任者として適任です。
新しく始めたプロジェクトですので、ツールの導入から、効果を発揮するまで時間がかかるものです。
会社の為を思って始動したプロジェクトでも、社内であらゆる反感を受けて、ツール導入自体、あきらめたくなることも多いです。
そのため、業務効率化を最初から最後まで、あきらめずに取り組む意思がある人を担当者にするようにしましょう。
これは、業務効率化成功のカギとなります。
4-6. スケジュールの策定
導入するツール、担当者も決まって、いよいよスケジュールについて決定します。
社内システム導入について、スケジュールを設定する際に優先的に視野に入れる項目は、次の通りです。
特に、補助金の活用を検討する場合は、申請書類の準備から、プロジェクトの報告まで、厳しいスケジュール管理を強いられます。
少しでも、書類提出の遅延や、報告の遅延があると、せっかく支給された補助金も、返還が必要になります。
そのため、徹底的にスケジュール管理してください。
また、管理部員が業務効率化の担当者になった場合は、自分の首を絞めないように、指導のタイミングを調整してくださいね。
4-7. プロジェクト実施と検証
いよいよ、策を練ってきたプロジェクトを実際に実施、運用していく段階になります。
ここでは、計画通りの効果が出ているかを確認していく作業がメインになります。
そのため、各作業にかかる時間がどのように変化したかを細かくデータに数値で記録していく必要があります。
また、実施したプロジェクトで不具合が起こっていれば、修正作業もしていきます。
4-8. フィードバックと改良
業務効率化プロジェクトについて、データが揃ったら、期待値と実際の値を比較してみましょう。
そこで、明らかになった評価を踏まえて、今後の業務効率化策を検討していきます。
プロジェクトが上手くいっている場合も、上手くいっていない場合も、必ずフィードバックを実施してください。
何が理由で、結果がどうなっているかを認知し、記録に残しておけば、次同じ場面に遭遇したときに、対応が変わるからです。
そして、さらに改良できる点があれば、次のプロジェクトを立ち上げて、実施してみましょう。
5. まとめ
業務効率化を進めるうえで、さらに役立つ記事を次にまとめてあります。
ぜひ、参考にしてみてください。